島のお正月

こんにちは。本島スタンドのクルシマです。

今日は島のお正月についてお話をしたいと思います。

本島スタンド厨房スタッフの島ちゃんは笠島出身です。島ちゃんのお宅のお正月準備とお正月の風習について聞かせていただきました。

まずは笠島地区について少しお話をしましょう。

本島は、かつて備讃瀬戸に強大な勢力を誇った塩飽水軍が根拠地としていくつもの城を築いた島です。その城下町のひとつが笠島地区で、昭和60年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。三方は丘陵に囲まれ一方は天然の良港が開け、さらに港の前には向島があり敵からの視界が遮られている上、ふたつの島の間の海には浅瀬が潜んでおりむやみに入り込めば座礁してしまうという守りの地形に恵まれています。

水軍が活躍した時代の笠島の繁栄ぶりは言わずもがなです。

さて、島ちゃんのお宅は「じぞや(地蔵や)」というかわいい屋号をお持ちです。由来は、山からお地蔵さまが転がってきて家の前に留まったから、と伝えられているそうです。ほっこりするお話ですね。

屋号には、島ちゃんのお宅や、法然さんを風呂にお入れした「ゆうや(湯屋)」のように言い伝えからくるもの、「九平さん」「彦七つぁん」のようにご先祖様の名前を由来とするもの、「わたうちや」「こめや」のように職業からくるものというように多種多様で、現在でも多くの家に屋号が残っており、日常的に使用されています。

それでは島のお正月の風習についてのお話に入りましょう。

家の中には神様仏様がお祀りされていて、それぞれにおすわり(鏡餅)をお供えするそうです。島ちゃんのお宅には5箇所もの神棚があり、台所を守ってくださる荒神様を始め12の神々、ご先祖様へのお供え物として、毎年それぞれの神棚と玄関のためのおしめさん(しめ縄)とすべての神仏へのおすわりを準備し丁寧に飾りつけをするそうです。

お正月三が日は、白餅を薄く切ったもの2枚と尾頭付きのイリコを1尾を小皿にのせ、毎朝新しいものをお供えし、おひかり(ろうそく)を灯しご挨拶します。

こういう伝統的な神棚や習慣が残る家も建て替えが行われるたびに減っているとのこと、残念なことです。

おすわりの形は独特で、2段のお餅の上には黒豆のナマコ餅を1㎝ほどの厚さに切ったものを刀をのせているように置いたものです。うらじろやミカンなども飾らず、シンプルで力強い印象です。

島には小中学校がありますが、それ以降は島外に進学する場合がほとんどです。その後島外で 就職をすることも多く島に住民票を置く人は減少傾向ですが、年末には掃除とお墓参りの為に家族全員で島に戻るという方を多く見かけます。便利な島外で生活をしていても、ご先祖様への感謝と敬意は決して忘れないという気持ちは引き継がれているということが感じられ、空き家となっているように見えても実はご先祖様の心が生き続けていると思えるのは私だけでしょうか。

 島独自の風習がこの先も守られていきますように!   

本島の伝統を少しでも感じたいと、島ちゃんの指導のもと年末は本島スタンドでもスタッフ全員でおもちつきをし、おすわりを揉みました。

そしてお正月の明けた15日、皆のおしめさんを持ち寄り焼き清め、その火でおすわりを焼いておぜんざいを頂きました。旧年中の無事を感謝し新しい年の無病息災を祈りつつ。